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広島家庭裁判所福山支部 昭和32年(家イ)49号 審判

申立人 大原ミヨ(仮名)

相手方 佐藤ハツ(仮名)

主文

申立人大原ミヨは相手方佐藤ハツの子であることを確認する。

理由

本件申立の要旨は、申立人は戸籍上大野太平同人妻タミ間の長女として明治三十八年○月○○日出生した旨登載されているが、これは事実に反する、即ち申立人は相手方がその内縁の夫米沢五郎と同棲中に懐胎し嫡出でない子として上記年月日に出生したものであるが右米沢五郎は申立人の出生前家出したため申立人が相手方の嫡出でない子である旨の届出をすることを嫌忌し相手方の養父母である大野太平同タミの長女として出生した旨届出でられたものである。仍て申立人は右戸籍の訂正を求めるため申立人は右大野太平同タミの長女でないことの確認を求めたいが右大野太平、同タミは共に死亡しているので申立人は相手方に対し申立人が相手方の子である旨の確認を求めるというのである。

よつて広島家庭裁判所福山支部調停委員会は昭和三二年九月六日午前一〇時第一回調停期日を開き調停したところ当事者間において申立の趣旨のとおり合意が成立してその旨の審判を求める調停は成立した。

そこで当裁判所は必要なる事実調査を遂げ判断するに、本件記録に添付された大原定夫及び亡佐藤民三の各戸籍謄本、亡大野太平の除籍謄本同人除籍抄本、及び大野正市の除籍謄本を検討し当事者双方の審問の結果証人西川太郎、横井字吉の各証言を綜合し併せて申立人が戸籍上父大野太平が六十五才母タミが五十八才の時その間の長女として出生した事実に鑑みると、相手方は明治三十五年頃相手方の伯母である大野タミ夫婦の許に事実上の養女として引取られ相手方が数え年十九才の時婿として米沢五郎を迎え事実上夫婦として大野夫婦等と共同生活をしていたが大野太平夫婦と相手方との養子縁組届並びに相手方と米沢五郎との婚姻届を何れも提出していなかつた為、相手方は米沢五郎との間に申立人を儲けたけれども相手方と米沢五郎との間の嫡出子として出生届ができず加えて米沢五郎は日頃大野太平夫婦と不仲であつたため相手方がその子を出産する以前において米沢五郎は無断家出し爾後行方不明となつたので申立人は相手方の嫡出でない子として出生届をするを嫌い止むを得ず申立人を大野太平夫婦の長女の如く装いて虚偽の出生届を為したものであることが認められる。

然らば申立人が右戸籍の訂正を求めたいというのは当然のことであるが戸籍上の父大野太平は大正八年○月○○日に母タケは大正十五年○月○○日に夫々死亡している以上先づ生存実母である佐藤ハツを相手方とし申立人と相手方との親子関係存在確認の事件として申立を為しこれが審判を得た上戸籍法第一一三条に依る戸籍訂正の申立を為すの外ないから本件確認を求める申立は正当と認め家事審判法第二十三条に則り主文のとおり審判する。

(家事審判官 河相格治)

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